想像してください。
あなたの実家はコンビニが24時間営業じゃないような田舎で、両親はモデムでインターネットに接続しています(ちなみにプロバイダはSANNET)。あなたはしばらく実家に帰るので、この機会に光ファイバーを引こうと考えています。さて、どこの業者に申し込むか、あなたはどうやって調べますか?
ネットで検索? それとも家電量販店に行ってカタログをもらってくる?(ちなみにYAMADA電機はあります)
インターネットの普及に伴って、消費者の購買行動がAIDMAからAISASに変わったと言われます。ぼく自身の行動で考えれば、まさにそのとおりで異論のはさみようもないんだけど、実はそんなの一部でしかなくて大半はそうじゃないんだよって話を今からします。
多くの人はAISASのSearchは使ってるけど、Shareはしてないし、Actionだってあやしいものだ
冒頭の質問はまさにうちの実家で起こったことなんですが、ぼくは昼間に価格.comでどれが一番安いかを調べました。プロバイダーと別途契約とかいろいろ考慮すると、eo光(ケイ・オプティコム)が安そうだなと決めてました。
夜になって、おとんが会社から帰ってきて、「ドットコムで調べたらeo光が安そうだぞ」と言うわけです。ドットコムってなんじゃらほいと思ってると、どうやら価格.comのことをそう呼んでるらしく、昼休みに同じ情報を調べていた様子。
なので、冒頭の質問は、うちの実家に関しては、ネットで検索でした。でもYAMADA電機でもらってきたチラシもいっぱい家に置いてありました。
これまでも旅行だったり、家電を買う際にはインターネットで検索しているみたいです(この場合の検索対象は比較サイトのことであって、ブログ検索とかはしない)。その割には(田舎なのでクルマで買いに行くから)ガソリン代とかは無視してそうなんだけど。そうそう、ECも利用していません。どちらかというと相場観を知りたいから、ネットで検索しているだけのようです。
先日もぼくが靴下をネットで買おうとしたらすごく不思議がられた。まあそれは極端だとしても、この1年でうちの実家で購入されたものは本が数冊程度です。
田舎ではまだまだ折り込みチラシが有効で、ジャスコの「火曜市」などの特売日も集客効果がある。わざわざ近隣からクルマで来るからね。そんなもの。
そしてブログなんてやってないし(「それ日記やろ」という認識)、SNSもネズミ講の親戚くらいにしか思っていない。ひと通りテレビや新聞で言われてる程度の認識はあるんだけどね。商品の感想をネットでシェアするなんて考えたこともないはず。
こういう人ってあなたの周囲にいませんか? 実家の両親はどうですか? ネット業界じゃないところに就職している兄弟や友だちはどうですか?
事実を正しく認識することが大事
去年、『TIME』の「Person of the Year」は「You」でした。そういや「Masashi Tashiro」がネット投票でトップを取ったこともあったなあ。ま、それはさておき、この受賞理由としては、WikipediaとかブログなどCGMでの情報発信によるデジタルな民主主義をリードしているのは「あなた」だからだということらしい。つまり「あなた」が主役、というわけ。
だけどぼくの感覚では今でも大半の人は情報発信などしていない。ネット上の情報を以前と比べて活用している人は増えている、それは事実だとしても。
例えば、接続料が安くなったり、ブログが登場したことにより、
- 10年前と比べて、インターネットに接続できる人は増えた
- 10年前と比べて、インターネットを利用する人は増えた
- 10年前と比べて、情報発信する人は増えた
というのは事実だと言える。
だけど、まだ国民の大半は10年前とそんなに変わらない消費行動を取っている。ネットの普及よりも、家電量販店やショッピングセンターの進出のほうが彼らに与える影響は大きい。
東京に住んでいると忘れがちなんだけど、実態はそんなもんじゃないだろうか。
もちろん、彼らの消費行動もゆるやかにシフトしているだろう。今後ぼくらと同じように、あるいはケータイを使って評価をシェアすることもあるかもしれない。
なのでネット上にある意見に関して言えば、
- 10年前と比べて、ネットの意見の偏りは(母数が増えたために)マシになった
というあたりが正しくて、ぼくもブログの最大の長所は「消費者の生の声が可視化されたこと」だとこれまでも主張しているけど、そこにいる「消費者」は偏っていることもあわせて認識しておかないといけない。
もし自社の中心顧客がネットのヘビーユーザーなら、その偏りは無視できるだろう。あるいは今後、対象顧客をネットユーザーに広げていきたい場合も、そこにある声を重視すればいい。
ただ、清涼飲料水や化粧品のマーケティングを考える際にネットの声を重視しすぎるのは間違ってるし、テレビやクルマでも大半の顧客は情報発信なんてしていない。
誤解しないでほしいのはネットでプロモーションをしたり、CGMの分析をしたりすることに意味がないなんて言ってなくて、その偏りや全体に占める割合を前提にしないとダメですよということ。企業にとってちゃんと取り組めばプラスアルファとして積み上がるのは紛れもない事実なのだから。
便利さは普及しやすいけど、おもしろさは普及しにくい
じゃあどうして、うちのおとんはネットで検索はするけどブログは書かないのだろう。
ぼくはその理由を実益の有無にあるんじゃないかと考えている。つまり比較サイトで検索するのは「いかに安くその商品を買うか」という点で、自分に明らかな見返りがあるからやっているだけなんじゃないかと。
見ていると、壊れやすいとかそういう風評を調べることも特にしてなくて、そういう調査も本当は自分に見返りがあるはずなんだけど、とにかくわかりやすい価格比較がほとんどすべてと言っていい。
一方でブログに書くと、中長期的には(友だちができるとか小銭が稼げるとか)いくつかの実益と呼べるメリットがあるかもしれないけど、基本的には楽しい・おもしろいからやるわけで、すでに他に趣味がある人たちにとって、わざわざブログを始める理由にはならない。実際うちのおとんも草野球はいまだにやってるしね、もうすぐ定年になろうというのに。
ここにキャズムを越えるひとつのポイントがある。
ケータイ電話もそうだけど、便利なものは普及するのがとても早い。なぜなら満場一致な状況を生み出すから。お金だったり時間だったり、何かしらのコストを節約してくれるので(バーターのこともあるけど)大多数の人が積極的に導入する。
だけど、おもしろいってのは常に主観の問題だし、そもそも必然性がないに等しい状態なので、特にブログやSNSのように時間を消費するものは「別にいいや」ってことになりやすい。
AIDMAからAISASと言われても(ぼくも言ってるけど)、市場の全員がそうなってるわけじゃないし、その辺のバランス感覚を持ってないといろいろ見誤ってしまいます。今回の実家の出来事はぼく自身にとっても、ここまで考えるいいきっかけになりました。
実家に帰ると、いろんな発見があります。田舎もんでよかったと思う瞬間。
[追記]
本当はまさみがCMしてるフレッツ光(NTT西日本)のほうがいいんだけど、高いからね。ほんとにかわいいよ。











コメント(5件)[コメントだけのRSS]
新卒で入った会社の人たちや、親を見るにつけ、インターネットが狭くて偏ってるってのは認識しているつもりですが、
>便利さは普及しやすいけど、おもしろさは普及しにくい
↑は、胸に突き刺さります。
投稿者: f-shin | 2007年8月31日 16:12
×新卒で入った会社の人たちや
○自分が新卒で入った時の会社の人たち(製造業)や
連続カキコすいません。
情報系とかSFCでずっと学生時代を過ごしてしまった人はこの辺の認識ってどうなんだろうと思うことがたまにあります。
投稿者: f-shin | 2007年8月31日 16:14
その世界にどっぷりはまってると、アタリマエのことに気づかなくなってしまいますね。
こうして指摘されて「当然じゃん」って言うのは簡単なんだけど、じゃあ日頃からちゃんと意識して考えられてるかっていうと怪しいものです。
ぼくもその辺の人よりは敏感なほうだと思っているけど、もっと気をつけようと思いました。
投稿者: 河野 | 2007年9月 1日 00:37
久しぶりに実家に行ったらまだDVDプレーヤーがないのに驚きました。
確かに年寄り二人、特に見たいものもなければ買わないわなあ。
買ってあげることにしました。昔の映画が安く見られることも知らないと思うので。ソフトつきで。
投稿者: 四家正紀 | 2007年9月 3日 12:04
そうですよね。うちのおとんは電化製品が好きなのでDVDプレイヤーもありますが、パソコンはあえてデスクトップを望んだり、やっぱり価値観が都会で暮らしてるサラリーマンとは違います。
詳細な地域シェアは知らないけど、クルマ(特に軽自動車)や電化製品は都市部以外のほうが販売台数が多いはずなので、そういう商品についてはもっとネット以外の部分とか、ネットのでもSearchの部分を練っていく必要があるでしょうね。
投稿者: 河野 | 2007年9月 4日 07:24