結構すごい話。
再販契約で定価販売を義務づける出版業界で、「売れ残った本」をインターネット上で値引き販売しようという試みが、12日から本格的に始まる。これまでの絶版本や期間限定の割引販売から一歩進め、小学館や集英社、講談社、文芸春秋などの大手出版社が、絶版の一歩手前の「在庫僅少(きんしょう)本」を提供し、半額で通年販売する。
ある意味これは時限再販に踏み出したってことなのかな。
出版不況で書籍の4割が読者の手に届かず返品されるなか、価格を拘束しない「第2の市場」を創設して本の復活をはかるのが狙いだ。
出版不況と返品率4割は関係ないでしょう。返品率の高さはずっと前からあったはずだし、その原因は価格ですらなくて、流通の問題なんだから。
今、全国には17,000店くらいの書店があるといわれていて、もちろんインターネット上にもAmazonやブックオフオンライン(一応言わせてね)とか数十店くらいの店がある。
一方で、初版部数を考えてみると、300万部近い「ONE PIECE」は異常として、多くの本は数千部程度。今度出るぼくの本でも出版社からは「5000~6000部程度」と言われている(別にこれは不当に少ないわけじゃない)。
ね、考えればわかるとおり、普通に配本したって全国の書店に足りないんですよ。なのに都市部の大書店やオンライン書店には数十冊、あるいは百冊以上が回されるわけで、地方の書店にはなかなか本が回ってこない。配本ゼロの書店が多いことは容易に想像つきます。
返品率4割というのは適正な配本が実現できれば、もう少しマシになる。
じゃあその適正な配本というのはどうすれば実現できるのかってことで、現在の委託販売制度を採用している限り、書店は(ゼロとは言わないけど)リスクがないから「くれくれ」言うわけです。売れなかったら返せばいいので。おもちゃ業界なんかは買い切りなので、売れない場合は自分が損をかぶるから仕入れがより慎重になるんだけど。
だから「くれくれ」言ってるから「はい、どうぞ」と取次(問屋)も配るわけにはいかない。そんなことしてたら余りまくるから。
この問題は書店がリスクを取らないと始まらないし、仮にそうなった場合に取次が希望通りの配本を保証してあげないと始まらない。その駆け引きが続いている。
出版社も取次も書店も、それぞれがもっと売りたいと思っているし、みんな悪人じゃない。これは多少なりとも業界に関わった人間として実感しています。
ただ、この硬直化した状態から抜け出す勇気がないし、リスクが背負えないというのも事実。もっともそんなのは出版業界に限った話じゃないですしね。広告業界のほうがひどいんじゃないかと思ったり。
で、とにもかくにも自分の顧客が何を欲しがっていて、どんな本を何冊仕入れたら完売できるのかを、各店は正確に把握していかないといけない。
いわゆる顧客マスタの整備です。これもそんなに簡単なことじゃないし、Amazonでさえできてるとは思わないけど、ここに取り組まない限り返品の山は消えないし、負のスパイラルから抜け出せない。
これを改善しようとしていたのがビーケーワン(TRC)の石井さんで、ぼくはそれに共感して2年間がんばった。最終的には意見が合わなくて離れたけど、ぼくは今でも出版流通の理想形については同じビジョンが見えてると思っている。
そして今、ぼくは中古市場も包含した出版市場を見ていて、そこでの理想的な流通を模索している。というとそこまで威張れるほどコミットしてないのだけど、そのお手伝いができるようにがんばっている。
話を戻すと、返品率4割というのはあくまでも流通の問題であって、価格の問題ではない。価格については多くの本はむしろ安いとすら思う。1500円の本が750円だったら売れるというのはもちろんあるけど(だからこそブックオフが成長したのも事実)、それ以上にその本が出ていることを知らないことや、知っていても地元の書店に配本されないことが問題なのです。
情報流通も含めた、流通の問題。
そしてここの問題解決をすることで成長しているのがオンライン書店なんだけど、偶然の出会いはまだまだ街の書店にはかなわないし、ネットユーザーの大半は今でもリアル書店で買っている。ぼくだってそう。週に1回くらいは駅前の本屋に行ってる。
出版業界の成長に、出版社の自社販売とリアル書店の建て直しは不可欠だと思う。
文化として書籍や書店を守るなら、それは再販制度で守るんじゃなくて、税制で書店を優遇してあげるとかのほうがいい。
その上で書店は(配本された本を並べるだけじゃなく)リスクを取って、仕入れた本を売り切る努力をしなきゃいけない。そうしないとこの業界は活性化しない。
ともあれ、今回の試みはいいことだと思うし、いい結果が出てほしいですね。











コメント(5件)[コメントだけのRSS]
返品率が流通の問題といってしまうと、ちょっと違うところもありますね。絶対数が少ないうえに都市部の大手にばかり流通が集中するために、結局売れ残って返品ということであるなら。確かにそういう側面もあるのは事実ですが、もっと大多数な別の事情もあります。まあ流通の問題といえなくはないですが。
委託販売制度も、配本が可能であるものはなんでも送ってもらって、売れなかったらなんでも返せるという印象であれば、それは間違いです。単に岩波とかの買取版元があるということとは別の次元で。
もっとも最近は事情が変わってきているのかもしれないので、その場合は聞き流してください。
投稿者: ムムリク | 2007年10月 8日 17:54
ん、具体的にどういうことが違うのか、書ける範囲でいいので教えてください。
ぼくの書いてる内容はウソではないと思うんだけど、不十分ならこれを読んだ人に申し訳ないので。
初版の部数設定の見積もりの甘さが、自転車操業的になってる出版社の財務体質にあるとか、ここに書いてないこともありますが、ぼくは根本的には適正な配本がなされないからだと思っています。
そして、それは(再販よりも)委託制のほうがネックになってると。
あー、気になりますー。
教えてください!m(__)m
投稿者: 河野 | 2007年10月 8日 18:02
> 委託販売制度も、配本が可能であるものはなんでも送ってもらって
ここについては希望部数を配本してもらえないのが問題だと思ってます。
そしてそれは書店もリスクを取らない限り(ex.買取)、どうにもならないとも。
投稿者: 河野 | 2007年10月 8日 18:06
すみません、嘘ということはないですし、確かに「適正な配本」という意味ではその通りというか、恐らくそれが究極のともいえるものかもしれません。その意味ではわたしがちょっと読み違えていた部分もたぶんにあると思います。
その上で、書店の側の状況(多くの地方のマイナーな書店)を。
出版部数からいってすべての書店にすべての本があまねく届くというのは無理というのはいたし方のないところです。出版社にも売れ残った時のリスクを考えれば止むを得ない部分もありますので。ただ、一方でどんなに在庫があっても大手の書店への配本が偏ってしまうのは適正な配本でないというのがまずありますね。
そのうえで、毎日膨大な点数の新刊が発行されて、売れ筋以外のそうしたものだけは配本されます。欲しいものはないが売れない(少なくともその店では売れないであろうと判断されるものなど)は棚の限界もあるので即返品になります。これもまた適正でないという意味においては、その通りですね(^^;
同様にどんなによいと思っても日々送られてくる分量と実際の棚の分量には大きな差があって、新刊でも返品せざるを得ない状況であったり、まあ入荷があれば返品があるのも(すべてが売れるわけでないかぎり)当然といえば当然かもしれません。
そしてそれらが取り次ぎと出版社による書店のランク付けによって配本が自動的に、そして格差の大きな形で決められてしまうこと。売上をあげればランクは上がるかもしれませんが、上げるための弾がない、という繰り返し。これも確かに適正でない配本ですねえ・・・。うーん。
買取のようなリスクがないというのは、確かに基本的にないのですが、日々の仕事の大半は返品に割かれるというのが現状で、これにもれるとそれは返品できないいわゆるしょたれ本として残ることになるわけです。新刊しかり、雑誌しかり、そして棚をしめている全てのほんが委託形態こそ違えどもそうした返品期限にいつも追われています。買取などのリスクとは違いますが、これはこれでコストにしても労力にしても徒労感の大きいものではあります。利益も少ないですしね。
うーん、やっぱりわたしがちょっと読み違えてしまった感が強いですねえ。消そうかと思いましたが、それも失礼かと思うので恥ずかしながら残しておきます。
#ただ、「書店は(ゼロとは言わないけど)リスクがないから「くれくれ」言うわけです。売れなかったら返せばいいので。」というのは間違いではないにせよ、正確でもないとは思います。
投稿者: ムムリク | 2007年10月 9日 11:49
ムムリクさん、どうもありがとうございます。現場の状況はぼくが知らないことなので、勉強になります。
ちょっと表現がよくなかったですね。申し訳ないです。
「くれくれ」言ってももらえないこと、パターン配本ではランク付けがすべてで、でもご指摘の通り、書店側が売れると思える本がそもそも入らないからランクも上がらない悪循環という問題はぼくも知ってます。
それと、棚の問題(店舗の陳列面積の問題)や、書店の現場が日々の返品作業で大変なのもそのとおりですね。
本質的な理解の部分がずれてなくて、よかったです。
そして、ぼくはこれを打破するには今回のような取り組みではなく、書店と出版社が双方リスクを取った流通改革を施す必要があると思っています。
(取次の問題は資本や財務の話になるので、もっと根深いのですが)
出版社が直接ディスカウントして売るのは書店にしてみたら何の意味もないし、利用者にとってもAmazonやブックオフがある中で、どれほどの意味があるのか疑問ですけどね。
投稿者: 河野 | 2007年10月 9日 13:12