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ベストセラーの作り方?

ちょっと長いけど、出版プロジェクトで考えたことをまとめます。(いつものアイドルの話題以上に)多くの人にとってどうでもいい話なので、読み飛ばしていいですよ。

なので、ぼくにしては珍しく(Feedで読んでる人の邪魔にならないように)、最初から追記部分に続きを書きます。

ベストセラーってのは最終的には知名度と運次第なんだけど、「騙される脳」にも書いてあった通り、出版業界の人にもベストセラーが生まれる仕組みはわかってない。
ま、こういうのはギャンブル必勝法と同じで、もしわかってても他人に教えるわけないんだろうけどね。

ちょっと考えてみた。マーケティングの観点で(それこそAIDMAとかを前提に)考えているので、出版業界の人で「いや、それちがうんじゃね?」というのがあれば教えてください。

けっきょく知名度と運なんだよね

はっきりしているのは、人間は権威に弱いから有名人の本のほうが売れやすいです。みもふたもないことを言ってしまえば、どこの誰が書いたかわからない本はなかなか売れません。
だから著者としてベストセラーを出版したいなら有名になることが先です。その人の名前を知ってる人が100人よりも1000人、1万人、10万人とあらかじめいるほうが売れる確率は上がります。

そして運。例えば世の中がたまたまダイエットブームになったとか(これもマスメディアを使って意図的に起こせなくもないんだけど)。
ビリーズブートキャンプなんてのも、USでは叩き売られてる商品なのに、例の番組のやらせ問題があったから「やっぱりダイエットは汗かかないとね」という風潮になったのがヒットの大きな要因。あれがユニークで、エッジが立っているというのは間違いないけど、そういう追い風だったからブームになったというのが正解。じゃないと(販売本数の)桁が一つか二つ小さいはず。

さらに、ベストセラーだから売れるというカクヘンみたいなことも売れ始めると起こるけど、これはもうボーナスみたいなものなので考えないほうがいい。そうなりゃいいなあと思うけどね。

ということで、ほんとの「ベストセラーの法則」なんてものはありません。ないけど、少しでも売れるような努力はできると思うので、できるだけ論理的に考えて、そしてひとつでもたくさん今回の書籍でも実践したいと思ってます。

とにかく書店で手にとってもらわなきゃ始まらない

平台に置いてもらったほうがいいのですが、それは書店と出版社の関係とか営業力とか、いろんな要素が絡んでいるので、ここでは考えません。
「知らない商品は売れない」わけなので、とにもかくにも書店で手にとってもらわないといけません(いまだに書籍の9割はリアル書店で売れてます)。

例えばこれはぼくの担当編集者が撮ってきてくれた写真ですが、紀伊国屋新宿本店でマーケティングの棚にはこれだけの本が並んでいます。

紀伊国屋 新宿本店 マーケ棚 2 紀伊国屋 新宿本店 マーケ棚 3

特にどの本を買うか決めてないけどマーケティングについての勉強をしたい人、ほんとは他の本を買いに来たんだけどたまたまこの棚に立ち寄った人、そういう方にまずは手にとってもらわないと、その本は世の中に存在してないのと同じです。
そして実際にその存在を知られないままに消えていく本は少なくありません。

なので、とにかく目立って手にとってもらうことを考えないといけません。

なによりも装丁

なによりも重要なのは目立つ装丁です。タイトルも大事ですが、それよりも装丁、特に色。例えば、上記の写真でも白い表紙の本が多いように感じませんか?
この中に白表紙の本を並べても同化して目立ちません。じゃあ黒くすりゃいいのか、赤くすりゃ目立つのかってことですが、もちろんそれが唯一の正解じゃないけど、ぼくは正しい選択だと思います。

ビジネス書のニーズは「勉強したい」というのが大きいので、教科書っぽい白表紙が主流なのかもしれないけど、ぼくはそんなコダワリは商売にとって意味がないと思っています。

妥協案として、帯でカラフルにっていうのもあるかもしれませんが、Amazonとかは帯なしで表紙画像を作るので注意は必要です。とはいえ、Amazonで表紙買いはあまりないので、帯でアクセントをつけるのはのっぺり白表紙の本と比べたら、悪くないと思います。

白表紙については汚れが気になるのは難点です。ぼくも客として本屋に行ったときに買うのをやめたことが何度かあります。どうせ買うならきれいなほうがいいし、これは手に取れちゃう(取らないと買えない)リアル書店だからこそ起こることですね。

表紙でチャレンジといえば「ノルウェイの森」ですが、あれも当時の業界では赤とか緑の表紙は批判の対象になったみたいです。でも金色の帯(銀色だっけ?)と組み合わせて、クリスマスカラーだからオシャレというよくわからない買われ方までしながらバカ売れした。ちなみにぼくも「売れてるから買って読んだ」くちです。あんまりおもしろいとは思わなかったけどね。

こういう業界の前提みたいなのは信用ならなくて、清涼飲料水やお菓子業界で青いパッケージは売れないと言われながらも、ポカリスエットやオレオは売れたしね。
ギャンブルではあるけど、あえて異端をゆくというのはけっこうアリだと思います。

あと、平台じゃなく、棚ざしになっても目立つように背表紙も重要です。
1冊の表面積が小さいので、もっと過激なほうがいいかもしれません。

ぼくは今回の本の装丁を「銀色」(か金色)にしたらと提案しています。それに赤とか緑の帯をつけてクリスマス風にする。ビジネス書で、そんな小説チックな装丁のものはないので目立つと思う。

たまたまの出会いを大事にして、ひとりでも多くの人に手にとってもらう、すべてはそこからです。そのためにはムダでも過剰でもいいから、装丁で目立つ努力が大切です。

いいタイトル

次に大事なのがタイトルです。

タイトルの場合、「覚えやすく」て「言いやすい」のがポイントです。「騙される脳」にも書いてあったけど、業界関係者同士の会話で出やすいというのは、多少なりとも追い風になるのかなと思います。もちろんそれは関係者に限った話じゃなくて、ほんとのクチコミを考えたときに「えーっと、あれ、なんだっけ、道玄坂で恋をする、いや、恋に落ちるだったかな、『道玄坂で恋に落ちる29の法則』って読んだ? あ、27だったかも」というのはある意味忘れないけど、たぶんここまでがんばって伝えようとしてくれる人は少ないです。
(ちなみに「道玄坂で恋に落ちる29の法則」なんて本はありません)

覚えやすいという点では、何かのパロディとか引用はありです。
「ノルウェイの森」もビートルズの曲名だけど、そういうのはフックにもなるのでいいし、すでに記憶されてる言葉の場合は有利です。

「最近、いい本あった?」ってのは「いい天気ですね」と大差ない程度の日常会話なので、言うほうもあんまり恥ずかしくない程度のタイトルで、でもそれを知ってること、読んだことを誇りに思えるような言葉であるのが理想です。

「東京タワー」ってのは別に誇りに思えるような言葉じゃないけど、言いやすいし、ありきたりな名称なので「それどんな本?」というリアクションも期待できるし、「いやー、それがけっこう泣ける話でさ」と話が続くのが予想できる。
こういうふうに相手のリアクションが予想できるのは気持ちいいです(相手をコントロールしている気分になれるから)。そういう人間心理を考えたときにも、「東京タワー」のようにどうとでも取れるシンプルなタイトルにするとか、あるいはタイトルで全部を言い表さずに含みを持たせたものにするとかが良いでしょう。

ここ数年で最高にうまいと思ったタイトルは「バカの壁」ですね。これはいくら有名人の書いた本とはいえ、このタイトルじゃなかったらあそこまで売れなかったと思います。

それと、最近はネットで探す人が増えているのは事実なので、検索しやすいのもポイントです。具体的には入力間違いが起こりにくそうなタイトルがよくて、「ノルウェイ」と「ノルウェー」のようなのはあまりよくない。
漢字かひらがなで迷うようなのも、検索対策としてはよくない。ただ、ある程度は出版社や著者が公式サイトを作るなりすればSEOは実施できるし、そこそこ売れればオンライン書店側が勝手にSEMでフォローしてくれるので、そこまで神経質に考えなくてもいいかもしれません。

シンプルで、誰でも間違いなく入力するタイトルとして考えると、やっぱり「東京タワー」は素晴らしいです。
なので、今回の本は「京都タワー」にすることにしましたうそ。

いやー実際、あのタイトルでタレント以外が書いて売れたかって言うとけっこう疑問だし、狙うべきは「バカの壁」のほうだと思います。
タイトルについてはもう考えすぎで知恵熱出かかってますけどね。

内容はあんまり関係ないかも

ぼくもまだ答えが出てないんだけど、ベストセラーと内容の良し悪しは関係ないんじゃないかなと思ってます。
どうすればクチコミが起こるかって話をずっとしていて、そのときに「ホンモノじゃないとダメだよ」って言ってましたが、実はそれもあやしいなと思っています。そのくらい人間は流されちゃうものだから。

小説なんかは好みの問題もあるので、ぼくが「ノルウェイの森」で泣けなくてもしょうがないんだけど、ビジネス書で考えても、いい加減な本が実際に売れている。あの本なんてウソばっかり書いてあるしね。
そういう現実を無視して、いい加減な賛美論や煽り文句しか書いていない本はたくさんでてるし、そのうちの何冊かはベストセラーになっている。それが現実。

そもそもホンモノかどうかを判断できる人はその本を読まなかったりするし、さらに得るところもないから他人に薦めないので、ブレーキがかかりにくい。
特に専門領域になれば騙すのは簡単になるので、最近のネット系の本を見ていても、正しいことを言ってる本が売れてるとは限らない。それどころか、明らかにわかってない人の本が売れている。

あと、批判的な内容よりも、賛美的な内容のほうが売れるような気はする。人間は他人の不幸と、自分の幸福に関しての話題を求めるので。
「Web2.0万歳!」って書いとけば「Web2.0なんて実体のない戯言だ」と書いてある本より売れる可能性が高い。
まあそこはプライドの問題もあるし、ぼくは書かないけど。

もっとも「いい本」の定義の問題は常にあって、どんなにつまらなくてもそれがベストセラーになったら、いい本だって言えなくもない(これはマンガなんかでもよく議論になる)。
ぼくもけっこうこの意見には賛成していて、大衆迎合と言われようが、1年前の話題だと言われようが、売れたやつがエライというのは真実だと思う。
ただウソはいけないけどね。それが境界線かな。

今回の本はぜんぜん迎合できてないのが残念です。というか、これって明らかに才能なので、ぼくみたいに自分勝手な人間はなかなかうまく迎合したことが書けない。すぐ言い切っちゃうし。
少しでもやさしく、読みやすく、わかりやすくなるように、編集者ががんばってくれてます(心から感謝)。

そのほか、献本したり、ネタを仕込んだり

ぼくは献本はアンフェアな感じがするので、今回もほとんどする気はないのですが(すみません、買ってください!)、発売前にプレゼントはやろうかなと相談しています。
例えばこのブログを読んでくれてる方から数名に発売前にお届けするとか。
ただこれはプライドの話なので、売ることだけを考えれば、とにかくばら撒いてブログの言及数を増やすのも少しは効果があるような気もしています。うーん、でもあんまり効果はないと思うんだよなあ。どうなんだろう。

ネタの仕込みはそれこそタイトルをビートルズの曲名にしたらどうかとか、いろいろ考えてはいるんですが、ボツになったアイデアとして2種類の表紙を作るのがあった。

実は1993年くらいに『Number』でやってるんですね。ジャン・アレジが表紙になった号で、写真を絞りきれなかったから2種類刷った(と編集後記に書いてあった)ことがありました。ぼくはそういうのがその頃から好きだったので(ほんと変態)近所のコンビニと、書店を回って両方ともゲットしました。もちろん中身は同じ(ほんとバカ)。

赤と緑でも、白と黒でも、金と銀でもいいんだけど、同じ本が2種類の表紙ってのは過去にないと思うから話題になるんじゃないかと思ったんだけど、けっきょく流通の問題とかでダメだった。残念。
まあこの件に限らず、出版なんてのは著者はリスクを背負ってなくて、出版社がすべてのリスクを取ってくれてるんだから、あまりワガママも言えない。もちろん売れるためにアイデアを出すんだけどね。

イベント的なのはやっていきたいですね。ちょうど仕事もないので(それはあんまりよろしくない状況だけど)全国まわれるし。
あと、ぼくがこの本を解説するんじゃなくて、鵜川くんとか狛江くんとか、そういう身近な人に解説してもらうのもおもしろいかなあと思ったり。それをネット配信してもいいしね。

「ズームイン!!SUPER」の後ろで看板持って映り込もうとかも考えたけど(ちょっとベタすぎ)、今はもうやってないのかな。
仕込みじゃなくて映りこめるとしたら、あとは「いいとも」の最初くらい?
それか地方の番組のほうがいいかもね。でもビジネス書だからな、一応。

そんなわけで

有名人じゃない人はとにかく装丁とタイトル決めで知恵を出し尽くせというのが結論ですが、とにかくそこに全力でがんばります。

もちろん内容も手を抜いてませんけどね。今はちょっと固有名詞とか出しまくりで、ちょっとぼくのルーズな基準でも過激すぎるので、もう少し穏やかに編集しなおしてもらったものを公開していこうと思います。

それにしてもタイトル、悩むわあ。

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コメント(10件)[コメントだけのRSS]

もと現場ということもあるのでちょっとだけ。

知名度というのは確かに大きいですね。タレントというだけでそこそこの部数がはけます。もちろんどんなタレントでもというわけではないですが、市井の人が自費出版したよりははるかに有利。

内容はあまり関係ないというのも、ある意味あたっていますね。内容がすばらしくて著名人の書いた本なら売れるかというと、そうでもない。同じように有名で内容としてはどうってことがなくても、売れるものは売れる。ただし、そうしたものは一過性なので売り切ったら終わりというところでしょう。

装丁のインパクトはタイトルと同列というところでしょうか。やはり目にとまる、それでいてくどくなくてなにかひかれるものを感じる。そんなものだったら平台でも光りますね。新書などは統一デザインですから、その意味ではタイトルのうまさ(あざとさではなく)で面白がってもらえたり、そうそうこういうやつ、と思ってもらえるのは大事なところでしょう。

本屋大賞みたいに書店発信のベストセラーとか、書店員の自筆のポップとかもありますが、一番影響力が強いのはなんといってもテレビや雑誌で、影響力のある人が薦めることでしょうか。王様のブランチなどはそのいい例ですね。新聞の読書欄などもありますが、これはタイムラグが問題なのでいまひとつ影響力は小さいです。

ノルウェイの森は確かに強烈ではありました。シンプルだけれどという例では「愛される理由」なんかは好例かもしれません。

#どこがちょっとなんだか。

思い出したので。
「ベストセラーの方程式」「本は読むより書く方が10倍楽しい」井狩春男。

今はなくなってしまった鈴木書店で数多くのベストセラーを見てきた(あるいは産んできた)井狩さんの言葉はひとつの参考になるやもしれません。

#後者には「ベストセラーの作り方」と題した項もあります。

フィードのほうは「続きを読む」が反映されてないみたいですよー。

釈迦に説法とは思いますがご参考。
http://blogging.from.tv/archives/000368.html

>ムムリクさん

そうそう!
マスメディアが取り上げれば売れる。これもみもふたもないんだけど、事実です。ビーケーワンでもそうでした。
王様のブランチとか、日経日曜版の書評とか。テレビのほうが影響大。
ドラマ化映画化も効果ありますね。ぼくのも取り上げてほしいなあ。
本屋大賞は権威というより、平台でアピールしてもらえるから売上貢献するんでしょうね。

井狩さんの本は10年くらい前に読んだ気がしますが、あんまりおもしろくなかった想い出が(苦笑)
でもあの人はファンがけっこういますよね。根っからの書店人じゃないので、よくわかんないですが。

>カイさん
わ、恥ずかしい。そしてせっかくの配慮が意味なし!
遅まきながら確認すると、Atomは全文配信になってたみたいです。でもAtomは全文配信のがいいんだっけなあ。
もうなんかよくわかんないので、全文配信でいきます……。

さらにいうと、今度の本は、ネットのクチコミでブームなんて無理、テレビに取り上げられないとブームなんて起きないよ、ってことも書いてます。

その根拠としてネットの普及率は高まったけど、利用率はまだまだであることを挙げていますが、数年後にはもう少し状況は変わっているでしょうね。それでもネットだけでというのはまず無理だけど。

あれだけ書いてもまだ抜けがあるな。

あと「広告」ね。
「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」は山田さんが自腹で広告出してたそうですが、そのくらい自ら風を送るというのも大事なことかもしれません。
ぼくは自腹はしないかなあ。うーん。しないかなあ。

ビリーズブートキャンプはアメリカでは確かに誰も見向きもしていないけれど、あの人はタエボウで、もの凄く売れた人です。

2番煎じだからアメリカでは売れていないけれど、大概の事で10年遅れて流行が来る日本で今売れるのは必然だと思います。それだけのクオリティーはあるんじゃないかな(日本での値段はともかくとして)

結局装丁とタイトルと運だろ?ってのはクラシックの売れない人が、ジミヘンドリックスを「派手にやって運が良かったから売れたんだよね」というのと同じ感じなのかな。

コメントありがとうございます。

運は重要なのです。決して投げやりな意味じゃなくて、運を想定しておくかどうかは実はとても大事なことだと思っています。

例えばアイスクリーム屋さんの社長になったとして、冷夏だったら売れないわけですよね。暖冬だったらユニクロのフリースも売れない。
天候は自分ではどうにもできないけど、間違いなく売り上げを左右します。

運も実力のうちとはよく言ったものですが、ぼくは真実だと思っています。

ベストセラーとは「短期間で爆発的に売れる本」という意味なので、とにかく普段本を読まない人に買われることが重要なんですよね。
これが「ロングセラー」となるとまた話が違いますが。

割也さん、コメントありがとうございます。
そうですね、おっしゃるとおり、ベストセラーとロングセラーは違いますね。まさにベストセラーになるにはその「普段本を読まない人たち」へ届かないといけないですよね。
その瞬間最大風速を出すには、やっぱりメディアの影響力は大きくて、芸人本がバカ売れしてるように、やっぱり有利だなと思うわけです。

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