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「もやしもん」に学ぶ「売る人」と「買う人」の関係

もやもやもやしもん。

もやしもんの最新刊よんだ。樹先生が話す売り手と消費者の関係性の件は、鳥肌もんだよ。お客様をは大切だけれど、神様扱いするだけではダメだという、一見して矛盾したことをきれいに説明している。Sun Jul 11 02:59:02 via TwitterGadget

フジイくんが「もやしもん」の9巻を読んで興奮していたので、たぶん連載で読んだあのシーンだなと思いつつ確認のために買ってきた。
(『イブニング』は毎号買ってるので、「もやしもん」もたぶん全部読んでる)

20100712143503.jpg

予想通り、「農」にまつわる(書ける範囲の)問題のところで、食料自給率の問題点とか出荷調整の話とか、あとは「身勝手な消費者」の話。
さすがに農地法の話は書けなかったみたい。まあこのへんは「極悪がんぼ」の担当だからね。

フジイくんはブログに書いてた。

以下は該当箇所の引用とぼくの感想。かなり長いです。

20100713082146.jpg

「消費者のエゴが諸悪の根源だ」という樹先生の発言に対しての


消費者が悪い
と片付けて
しまっては

社会が
成立しなく
なるのでは?
(「もやしもん」9巻 P.66)

という生徒(小坂さん)の問いに樹先生はこう答える。

消費者とは
何だい
そもそも

全ての人が
生活していれば
消費者でも
あるじゃないか

その個々の
要求が通るほど
社会は
甘くないし

それが通るような
社会など
成立しない
(「もやしもん」9巻 P.66)

まあ人類補完計画のようにすべての人がひとつになればいいんだろうけどね。
「すべての人が消費者でもある」というのはぼくもよく言ってる。「ユーザー」でもいいんだけど。24時間「中の人」じゃないんだから、「外の人」のときの視点や感覚を失わないことが大事なんだよね。

それがぼやけてるから企業と消費者の関係、もっというと「売る人」と「買う人」の関係についてももやもやしっぱなしになる。
樹先生は続ける。

売る立場は
本気で
「客は神様」と
思っているよ

しかし
買う側に回ると
それを真に受けて
神なら何を
要求してもよいと
思う者もいる

自分が

神ではなく
モンスターに
なっている事に
気付かずに

それを指摘し
倒せる最大の
力を持つ
マスコミは

先頭 切って
震え上がって
今や それらの
言いなりだ

「消費者」という
錦の御旗に
逆らう方が悪と
いう図式が出来て
しまっている

実は
そんな
タブーなど
存在しないのに
(「もやしもん」9巻 P.67)

「お客さまは神様」と売る側が思っているかについてはちょっと異論があるんだけど、ここでマスコミの体たらくに苦言を呈するのが「もやしもん」。

で、どーすりゃいいのよ、具体的じゃないという生徒(美里、川浜)のコメントに対してさらに樹先生は続ける。話長いよって、それが「もやしもん」。

売る側は
ヤな奴には
売らなきゃいい

農家は別に
社会奉仕活動
してる訳じゃ
ないんだ
(「もやしもん」9巻 P.68)

で、小坂さんが「それって売る側が横柄になるんじゃないの?」という問いかけをして、樹先生が「いや、それはむしろ苦渋の決断だ。だってほんとは売りたいんだから」と答える。で、問題の本質的な解決として、

だからこそ
消費者は
知る事が大事
なんだよ

無知なままでは
踊らされて
つかまされても
気付けないままだ

(中略)

さっきとは逆に
こんな奴に一銭も
払いたくねェって
買う側だって
言えるように

消費者と売り手は
互いに学び 知り
チェックし合い
支え合うのが正しい
関係なんだと思うよ
(「もやしもん」9巻 P.68-69)

と結ぶ。

樹先生(に代弁させた作者)の主張としては、消費者はもっと現実を知るべきだし、売る側も万人を相手にせず売りたい人にだけ売ればいいという話。
前者については完全にリテラシーの話なんだよね。食料自給率なんてのはその最たるものだけど、農薬が悪いとか、国産がいいとか、なんの根拠もない上に、そもそも十把一絡げに論じれるようなものじゃないのに簡単に流してしまう。そんな無自覚なままではまともな取引ができるわけないのに。

ただ「お客さまは神様」なのかという話は前にも書いたけど違和感があって、言葉遊びなのはわかりつつも、やっぱり神って言葉を簡単に使うべきではないと思うんだよね。宗教がいまいち根付いてない国だからかもしれないんだけど。

お客さまの要望にはできるだけ応えたいというのは当然の心理だし、ぼくもそうあるべきだと思う。ただしお客さまの要望はときに相反するし、矛盾していることも多々ある。その中でどうやってバランスを取るかと言えば、公平性を尊重するしかない。

『王様のレストラン』で「お客さまは王様です。しかし、王様の中には首をはねられたものも大勢います」というようなセリフがあったけど、ぼくはそれをけっこう思い出す。

ぼくはここでも引用した『王様のレストラン』のセリフ、「お客さまは王様です。しかし、王様の中には首をはねられたものも大勢います」がすごくしっくりくる。
さっきのモンスターの話や(ほんとはみんなに売りたいけど)ヤなやつには売らなきゃいいって話は、ぜんぶここに帰結する。

ディズニーだって、アップルだって、ビートルズだって、ソニーだって、巨人だって、ココイチだって嫌いな人はいる。万人に愛されたいと願い努力することが悪いとは言わないけど、その前に自分を支持してくれる人をきちんともてなし、そこでエコシステムが成立するような社会のほうが幸せだと思うし、そういう小さなコミュニティがあちこちにできてる世の中のほうが豊かだよね。

樹先生は他の回でもぐっとくる言葉を残していて、それは「選択の幅が豊かさ」という話。
豊かさというのは量じゃなくて質のことで、たとえばカボチャだけで何種類もあって料理にあわせて選べるとか、洋服でも自転車でも自分の好みや目的にあわせてさまざまなバリエーションが用意されているのが本当の豊かさなんだというセリフがあるんですけど、これもぼくはいまの時代にとてもあってると思う。

原作で読んだときに、そのセリフに思いっきり影響を受けてこんなことを書いてた。コミックスは買ってないので何巻に収録されてるかわかんないです(8巻くらいかな)。

芸術に意味がないとは言わないけど、こういうものを作るのにお金を出す人がいたり、それを見に行く人がいたりするこの国はやっぱり裕福なんだなあと思った。 「豊かさ」ってのは「多様性の担保」でもあって食でも文化でも、自分にはまったく不要だけどそれを欲する人がいて、それを生産する人が生活できるというのは豊かな証拠。

ただのもやしのマンガなのに(ウソ、もやしのマンガではありません)、いろんなことを考えるきっかけになりますね。「湾岸ミッドナイト」もそうだったけど。

コミックスの地(底の部分)に「ドラマ化」って文字が入ってた。こういう遊びが多いのも「もやしもん」。

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コメント(2件)[コメントだけのRSS]

この場合の神はまあ、多分に遊び的な意味もあるでしょうけど、日本の数多の神々の「神」って意味かつ、場合によってや厄神として上手く距離を保つ、上手に付き合うという意味として悪くないと思いますが、印象がよくないかもですね...(苦笑

コメントありがとうございます。

こういう話があります。

「お客様は神様です」について
http://www.minamiharuo.jp/profile/index2.html

まさにこの手の誤解(というか言葉のひとり歩き)が多いので、もうちょっと正確に伝わる表現のほうがいいだろうといつも思っています。
そういう意味でも王様の例のほうがわかりやすいなと。

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