ネットクチコミ座談会の最近のブログ記事

広告主も代理店も変わらなければならない

河野「広告主にとって一番いい結果を出そうと思ったら、広告も広報も、もちろんクチコミも全部使えばいいんです。最適な組み合わせで。商品と消費者をどうやって繋いであげるかとか、どうやってメッセージを届けてあげるかとか、本当はそれが問題のすべてなんだけど、そうじゃないところで問題が出ている。例えばうちはPR会社だからヤフーのバナーは買えないとか、うちはイベントやったことがないからイベントはとりあえず提案内容から外しましょうとか。自分にできることとか自分のやりたいこと、その代理店の社内事情も含めて、提案内容がどんどん理想からかけ離れたものになってしまう。それを見抜けない広告主にも問題はあるかもしれないし、オリエンテーションの下手さがそもそもの原因かもしれない。ここのミスマッチというか、うまくいっていない部分を解消するには、まず広告主が変わらなくちゃいけないし、代理店ももう少し広い提案ができるように変わらなくちゃいけない。そうなったときに新しいプロモーションやマーケティングが生まれるんだと思います」

アカレン「広告主側って自分たちしか見えていないから、世の中に発信すればみんなが聞いてくれると思いがちじゃないですか。実際には情報が多すぎて、誰も聞いちゃいないのに。だけど何かやれば聞いてくれると思っちゃうんですよ。自分たちが広告を出稿すれば成果が数字として積みあがると考えちゃうけど、せいぜい認知度が上がるくらいの効果しかないんですよね。ここでまず食い違っている。それと、代理店から『売上が増加します』っていう幻を見せられちゃうのも問題です。まずそんなことは起きないのに。もしかしたら話題になるかもしれないけど、ほとんどのケースではそんな魔法は起こらない。それくらいの感じでいないとダメなんだと思います。クチコミって効果はあると思うんですけど、自分たちが想像しているほどの効果はないってことをちゃんとわかってないといけませんね。過度な期待をしちゃいけないですよ」

ガッチャ「期待させるかどうかは人によりますね。とりあえず相手が納得すればいいという考え方もあるにはあるでしょう。結局ウソかもしれないけれど、その誤差ってほどほどじゃないですか。その『ほどほど感』が正しく伝わっているかといえば、伝わっていない可能性は大いにあると思います。たまたまうまくいっただけの事例なのに、代理店がさもすべてのケースがそうであるかのように説明する。私もそれは良くないと思っています」

アカレン「そうですね。代理店の方はそういうことを言われるし、この人に頼めばすごいことになるんじゃないかって誤解してしまいますね」

河野「その代理店が得意げに話している数少ない成功事例ですが、それを雑誌などが取り上げるわけです。ものすごく煽った記事なんだけど、それがまた誤解を大きくしている。悪循環ですよね。その結果、ありえないくらいの期待値を広告主側が持ってしまっている。『日経MJ』とか『宣伝会議』の責任は大きいと思いますね。まさにバブルですよ」

ガッチャ「特定の手法が流行るときはそんな感じですね。現実の話、営業が煽って売ってきた広告主は二度とやらないことが多いです。どうしても期待が大きすぎるので、多少効果があっても裏切られたと思ってしまわれますから。そういうことをこれまで何度も見聞きしているので、私自身はこれを繰り返すのは良くないと思っているんです。でも現場の営業からしてみれば、ノルマもあるし、形はどうあれ売上を上げればほめられますから、今すぐやめるのは難しいですね。広告主の担当者にしても、三年後に効果があるという話に興味を持つかどうかわからないですし」

河野「大半の担当者は示さないでしょうね。三年後の結果で昇進は決まらなくて、三ヵ月後の結果で昇進が決まるので。この問題を解決できるのは会社の上層部から変えるしかなくて、広告主側の経営陣の意識を変えて、評価の軸を変えるしかないですね。責任者が担当者に『三ヵ月後の成果ではなくて3年後を見据えてやれ』と言わない限り、現場としては超短期でしか動かないですよね。中長期に視野を変えるには偉い人が言ってあげるしかないでしょう。そうなったときに初めて代理店側も変われるかもしれない」

アカレン「私は代理店が打ち上げ花火のようなプランを持ってくるのがいやですね。バンと机を叩いて『二度と来るな』って言いたくなります。派手なキャンペーンだけが提案だとは思わないですし、もっと地に足の着いた提案が聞きたいです。私は広告主側の中ではわかっているほうだと思いますけど、そういう人も世の中にはいるから、わかっていない人向けの煽ったプランだけ持ち歩かなくても仕事が取れるかもしれませんよ、ということは言っておきたいです。いい代理店となら腰を据えてつきあいたいですから」

河野「なるほど。今日は現場の方に集まっていただいたので、別の視点を発見することもできました。広告主、広告代理店、PR会社とも、現場ではなく、上司・経営者の変化が必要ですね。ネットクチコミだけでは売上を左右するようなブームはまず起こらないことも確認できたし、その一方で顧客とのコミュニケーションという観点でのイベント実施などは可能性もありそうだと感じました。今後のクチコミマーケティングは、長期的なブランド構築まで見据えたプランを、広告主と代理店が協力して考えていけるかがポイントになってくるでしょうね」

河野「あらためて、本日はお集まりいただきありがとうございました」

一同「ありがとうございました」

end

クチコミマーケティングは広告なのか、広報なのか

河野「そもそもクチコミマーケティングって広告なんでしょうか。広告の定義とか広告の測り方でクチコミっていうものを見ると、短期で何らかの数字を出さなくちゃいけない。そうなると手っ取り早くブロガーを呼んで書かせたり、百円で記事を書いてもらったりとかそういう話になります。でも、それをやっている限り、必ず倫理的、道徳的な問題が付きまとうでしょう。クチコミって広告よりむしろ広報に近いと考えると、単発ではなく小さいコストを数年間ずっとかけ続けるほうがその会社にとっていい結果に繋がるんじゃないかって思うんですよ」

アカレン「さっきのゲームを十ヵ月後に買ったということを考えても、これってプロモーションを仕掛けた人が十ヵ月後に得た成果なわけでしょう。それを三ヵ月間の成績だけでダメだと評価されるのはあまりにもかわいそうだと思います。今の成果指標っていうのは三ヵ月後でどうとか、判断基準が厳しすぎる気がします。もうちょっと長い目で見ていいのではないでしょうか。すでに話が出ているようにクチコミっていうのはもっとブランドの話と繋げるべきだと思っていて、それこそ二年や三年ってスパンで考えればいいもので、数ヶ月程度のトラックバック数で判断すべきじゃないと思う。そう考えると、単発プロモーションとしてのブロガーイベントにはあまり効果はないんでしょうね」

河野「クチコミを広告として語っている限りは一生前に進まないというか、同じところを回り続ける気がしますね。最初に言ったように、消費者にもブロガーにも広告主にもダマされ続ける人はいるし、すべての代理店が悪というわけじゃないけどダマす人たちのビジネスチャンスが常にあるわけです。それはそれで認めざるをえない現実なんだけど、本当にその企業がハッピーになるためにはもっと長い目で見なきゃいけない。そして長い目でつきあうためには広告として捉えちゃうとそもそも無理なんじゃないか、と思ってます」

アカレン「広告主側もちょっと考えをあらためるべきだと思いますね。売上をもっと伸ばしたいとか、業績が下がっているときに一発逆転を狙いたいとか、クチコミに頼りすぎてる気がします。でも、売上が増減する要因ってそれだけじゃなかったりするでしょう。ターゲット層が減少しているのかもしれないし、競合企業が増えたのかもしれない。そのときに、市場での評価ってたいして変わりはないんですよ。評価が落ちたから業績が下がってるわけじゃない。そんな状況下でクチコミのプロモーションをやっても業績が回復するわけないですよね」

河野「広告と広報というのがものすごく混在してきているな、ということをここ最近考えています。実際にはぼくはこれまで勤めた企業で両方見る立場が多かったから余計にそう感じるんですけど、広告頭で考えてるのか広報頭で考えているのか、どっちかよくわからない話が増えていますよね」

アカレン「全体をもっと包括的に捉える必要がありますね。単に広告でどうにかなると考えたいんですけど、なかなかそうはいかない。宣伝だけではなく商品力を強くするとか、そういう企業努力をきちんとPRするとか。そうすれば会社のことを話題にしてくれる人も増えるでしょうし」

河野「ブランディングするときでもPRで認知を高めたりすることもあれば、広告を出稿することで世の中にアピールすることもあります。いつも両方が頭の中になければいけないですよね。これからはますます広報と広告が一体化、混在化していくと思います。ただ、日本の広告業界、広報業界を見ても、まとめて面倒見てくれる人はいないんですよね」

ガッチャ「代理店で全体像を把握している営業ってすごい少ないんですよ。ネット広告の予算は五百万円だからって言われて、『ほかは?』って聞くとわからない」

河野「広告代理店を呼べばメディアプランばっかりだし、PR会社を呼んだら『イベントやりましょう』としか言わない。両方を組み合わせて最大の効果を出しましょうって提案が出てこない。広告と広報の領域を飛び越えて提案できる人たちがいないのは問題ですよ」

ライダー「まずオリエンテーションが下手な広告主が多くないですか」

ガッチャ「広告主側からすればもっと質問してこいよってことなのかもしれないですけどね。長期的にということでは、代理店にも悪いところがあって、短期で取れるだけ取ろうという発想になったりするのはまずいですよね。とくにネット系の代理店の場合、離職率が高くて担当者が頻繁に変わるとか、そういう問題もありますね」

アカレン「本来は広告と広報を包括的に考える頭っていうものを企業側が持っていなくちゃいけないと私も思います。ただ、常に広告を出稿し続けるわけじゃないので、自分たちで考えることを放棄して、必要なときに代理店に頼るほうが経済的にもいいと判断しているかもしれません。本当はその形が良くないと思うんです。広告主側にも落ち度はいっぱいあって、中小企業の場合は人が少ないっていうのがそもそもの原因なんですけど、やっぱりこのままじゃいけないですよね」

(まだ続きます)

クチコミは仕掛けられるのか

河野「ぼくはクチコミの定義は『波紋が広がる』ではないですが、人づてにブランドなり商品なりが語られていくということだと思っていたんだけど、それは成立しないのかもしれない。少なくとも企業側が仕掛けられるものじゃないと思っています。ある人に気に入ってもらえるかどうかというのはクチコミではなくてCRMの話であって、コールセンターに入電したクレームの電話にきちんと対応しましょうと言っているのと変わらないと思います。でも、みんながクチコミに期待したり、広告予算を突っ込みたいと思うのは、1が100になるという奇跡的なものを求めているからでしょう。それは無理だと思うんです」

ライダー「微妙なラインですよね。私が最近すごいなと感じたのは任天堂のシールの話※で、ああいうものもクチコミだというのであれば、あるのかなと思いますけど」

河野「普通の人はそんなに知らないと思うけど、その任天堂のケースは、たしかにネットではそこそこ有名になった話ですよね。でも、あれってリアクションじゃないですか。任天堂がゼロから計算して仕掛けたのではなくて、故障の交換という顧客からのアクションがあって、どうすることが一番いいのかを任天堂が考え、その結果としてシールを同じ位置に貼ってあげたら喜ばれて、その人がブログに書いて広まったわけです。ここには広告代理店もPR会社も登場しません。企業がお客さんとどう向き合うかという話なので、クレーム電話の対応とそんなに変わらないです。ただ、今クチコミマーケティングというものがビジネスとして存在している以上、それを評価するには能動的に仕掛けられるかどうかがポイントだと思ってるんです。つまり、ある一定のお金をかけて何かをやれば1が100になったり、100が1000とか10000になったりということが達成できるかってことですね。そういう可能性はあると思いますか?」

ライダー「あるかもしれないですけど、クチコミだけでは無理だと思います」

河野「それはどうしてですか?」

ライダー「例えば、興味のないことを話題にしても無視されてしまうので、ある程度の基盤みたいなものを作っておかなければいけないと思います」

河野「それは関係性の話ですか? 人と人、会社と消費者のような」

ライダー「そうです。商品と消費者とか。そういう意味ではブログやCGMだけでどうこうというよりは、メディアで取り上げられたり有名人が使っているというような、そういう広告的な動きやPR的な動きを絡めれば可能性はあると思います」

(まだ続きます)

クチコミを考えるには、人の心理を知らないといけない

河野「その話は実際にブログを書いている本人を知っている同僚同士だから起こるような気もしますね。それはさておき、今聞いてちょっと理解できると思ったのは、ランチって必ず食べるでしょう。例えば、お米を買うときに『あきたこまち』か『コシヒカリ』かで悩むというケースでもいいんですが、必要なものを選ばなくちゃいけない状況って全員に等しくあると思うので、そのときに他の人の意見を参考にすることはありますね。でも買わなくてもいいPS3を買うとか、スニーカーを買ってジョギングをはじめるとか、本来必要ではないことを相手にやらせるのとは違うと思います」

ガッチャ「なんとなく選びたいもの程度でも効果はあるんじゃないでしょうか。旅行とかそうじゃないですか。ブログで誰かが外国に行ったことを書くと、他にその国に行く人がやっぱりいるんですよ」

河野「旅行に行くのはぼくには理解できないですが、クチコミを考えるときに心理学って重要ですよね。人間って基本的に怠惰で物事を決めたくないと思っているんです。マニアとかオタクとかいろんな言葉があるけれど、その人ってすべてにこだわりがあるわけではなくて、米はこれ、水はこれ、野菜はこれとか全部のものにこだわりを持っている人はまずいない。その人は米にうるさいかもしれないし、電化製品にうるさくてソニー以外買わないとか、車はトヨタにしか乗らない、といようなこだわりはあっても、何から何まで自分の明確な意思で決めている人はほとんどいないと思います。だから自分にこだわりがあるかないかでも影響の度合いが違うんじゃないでしょうか」

ガッチャ「どこそこの車を買いましたという記事を読んでも、その車は買わないですよね。それでニーズが掘り起こされるというよりは、そもそも自分にニーズがあったり、後日できたときに選択肢が入ってきやすいという感じなのかもしれないですね」

河野「自分の意見とか主張、選択基準というものがない状態、さっきのランチのように、別にどこでもいいけど食べなきゃいけないってときに、誰かがおいしいと言ったらとりあえずそこでいいやという程度の話ですね。後悔したくないもの、つまり車を買うということは間違えたらめちゃくちゃ後悔するけど、ランチがまずくても二度と行かなければいいだけの話です。価格や消耗頻度によると思うんですが、選択を失敗したときにあきらめられる場合は、わりと人の意見に流されやすい気がします」

ガッチャ「見るきっかけにはなっても、購入する動機にはならないでしょうね。いったん見てみようかな、くらいにはなるんでしょうけど」

アカレン「いったん見てみようかなって思わせることができたら、私だったらもう成功だと見ていいんじゃないかなと思いますね。そういう意味でもクチコミは仕掛けられると思いますよ。仕掛けるっていうのが、購入ってところを成果とするか、知ってもらう機会を与えたということを成果とするかで差はあるんでしょうけど。これは広告代理店に対してゆるい基準になってしまうのかもしれないのですが、認知する機会をユーザーに与えただけで良いという考え方もあると思います。広告主としてはすごく甘い評価基準でしょうけど。私自身の例でお話しすると、十ヵ月前にブログキャンペーンをやっていた、あるゲームを最近買ったんです。たしかに私はキャンペーンがきっかけで興味を持ったのですが、そのときは買うこともなくて。でも十ヵ月後に購入した自分が今ここにいることを考えると、十ヵ月後だけど、それはブログキャンペーンの成果じゃないかと思うんですよ」

ガッチャ「十ヵ月後だと担当の代理店はほめてもらえなかったでしょうけどね」

ライダー「今の話を聞いていて思ったのは、クチコミマーケティングってその人とブランドとの結びつきみたいなものが重要になっているのかなと個人的には感じています。さっきの『クチコミとは何ぞや』という定義ですけど、ある調査によると一週間のうちに人間は200くらいのブランド名を語るらしいんですよ※。その出てくるブランド群の中に自分の会社やサービス名が入れるようにがんばろう、というのがアメリカでのクチコミマーケティングの考え方になってきているらしくて。私自身もブロガーイベントやっていて思うのですが、これはウケないだろうっていうものも意外に喜ばれたりするんです」

河野「なるほど。そのブランドとの結びつきを実現する役割が従来のマス広告ではなく、クチコミマーケティングなのかがいまいちわからないですけど、消費者の選択肢に入ることが重要なのは真実ですね」

ライダー「弊社で飲料メーカーの新商品のイベントを代理店とがっちり組んでやったんですけど、同時期に他の代理店もその商品のサンプリングもやっていたんです。そうしたら、やっぱりブロガーイベントに呼んだ人たちはやたら詳しく新商品のことを語ってるんですよ。一方、サンプリングのほうは『お店に行ったら何かもらえたからラッキー』という程度しか書いてなくて。マーケティングの担当者はブログに書かれた書かれなかったという実数より、内容を見てまたブロガーイベントをやりたいと言ってくれたりするんです」

アカレン「詳しく語るというのはどんなふうにですか?」

ライダー「例えばメーカーの歴史を延々と書いていたり、新商品の味の由来とかもレポートされていて、そういうことを広告主は喜んでましたね」

河野「うーん、それはただのトリビアですよね。ブリヂストンの社名の由来が創業者の石橋さんだというのとあんまり変わらないんじゃないでしょうか。もちろんそういう秘密っぽい情報がクチコミしたくなるのはわかりますけどね。クチコミの定義が曖昧なまま話を進めるのは申し訳ないんですが、単純にイベントに呼んだ人が満足して、翌週その人が語る200のブランドの中に入れてくれるかという話で言えば、ものすごく効率が悪いと思います。百人くらいしか集まらないイベントに人員を割いて、そのうちの何人かが翌週クチコミしてくれるかもしれないけど、たかだかしれていますよ。ネットも同じでブログに書いたところでそれを読む人の数っていうのはごく少ないものですしね。さらに読者全員がすべての記事を隅から隅まで読んでいるわけじゃなくて、興味がないと思ったら読み飛ばすわけでしょう。RSS※の購読者数やアクセス解析のユニークユーザーは最大の数字であって、大抵はその半分以下しか読まれていないのが現実です」

(まだ続きます)